膨れ上がる左頬と不安・・・

J大学病院で言われていた抗がん剤の有効期間1ヵ月半〜2ヶ月が経過し、
ここ1週間ほどで目に見えて左頬が腫れ上がってきた。
やはり、今回の増殖は今までに対して明らかに早い・・・


前回の続き


S総合病院にて
一応主治医である耳鼻科のT医師に会う。
開口一番「で、どうでしたか?一応、今までの経緯はK大学病院のI医師から聞いてますが、その後の経過はどうです?」と聞いてくる。(心づけ貰うだけもらって、手術3日前に体調不良とやらでバックれた上にそのバックれのせいで人を散々振り回したくせに詫びの一言もなく、いつもの調子で聞いてくるかこいつ!?)


MRIの結果見させてもらいました。これだけ抗がん剤で制御できたのだったら、眼を取るのもったいないよね〜」(お、いい感じ?)


「I医師は、なんて言っていたの?」
と聞いてくるので、最後に言われた皮肉への悔しさもあり、
こんな事を言われたんですよととにかく説明していると、
「そうですよね〜、難しい問題だ。」と言い始める。(あれ?)


プロテーゼにしてもエピテーゼにしても日常生活は非常に困難になるし、
左眼球を残す事によってガンが眼球下から再発した場合、ガン細胞が眼球内の成分を押し出すと肉体がその成分を異物と判断し抗体を作り始め、
右眼球も異物として攻撃され、両目失明の恐れも出てきますよ?」と、
初めて聞かされる左眼球温存によって引き起こされる衝撃の展開!!


「うん、やっぱり眼球取っちゃえば?」
「眼にくれば、脳も近いよ?命に勝るもの無しだよ?」
と畳み掛けてこられる。
両目失明の可能性を衝きつけられ、眼球温存ルートが絶たれたというショックで返答に困っていると、
「これからサイバーナイフのM医師にも会うんでしょ?
彼、サイバーナイフ一辺倒だからサイバーナイフで何とかしようとするかもしれないけど、色々な医師の意見を聞いて後悔のない選択をされてはどうですか?」と、
T医師自身は関わらないニュアンスで診察室を送り出される。


次にM医師に会う。
「いや〜、大変だねぇ。J大学病院へ講演に行った時O医師から君の事聞かされて驚いたよ。
丁度、あの時抗がん剤治療で入院していたみたいだね。
どんな経緯でJ大学病院に入院する事になったの?
で、退院後の体調はどう?」
おぉ、少しは心配してくれていたのかな?と思いつつ、
これまでの経緯、流れ流れてS総合病院に戻ってきてT医師に眼球を取った方がいいといわれた事を説明。


M医師もMRI画像を見て
「これで眼球を取る判断は早計じゃないかなと思うよ?」
「ただ、抗がん剤治療が終わって既に1ヵ月半になろうとしていて、
MRIを取ってからも2週間経つからPETで現状を把握して、
それから出来る事を探していきましょう。」
と提案されPET検査の予約を入れて、その日は終わる。





帰宅後、
両目失明は、さすがにまずいな〜
嫁さんや年老いていく両親に介護の負担をかけてしまう申し訳なさももちろんだが、
これから成長していく子供たちに物心が付くか付かないかの時期から盲目の自分というお荷物を背負わせるのだけは絶対に避けないと駄目だろと、部屋に引きこもり悶々と悩んでいると、
親から「両目失明なんて、もってのほかだし、脳にもすぐ来るというのであれば、左眼球なんてさっさと取ってしまえ。」と連日言われるようになる。


嫁さんからは「片目を取って見た目が悪くなっても、
もう結婚していて自営業なんだから婚活や就活みたいに外見を気にする必要もないでしょ?
もう子供だっているわけだし、外見が少し変わったぐらいで離婚とか言い出さないから、片目を取ってもいいんじゃない?
両目失明したらゲームも漫画も子供の成長も何も楽しめないよ?」
と説得され、
ほぼ観念しPET検査を待たずにK大学病院へ眼球を取る意思表明と手術に関しての質問をしに行く。




K大学病院にて その2
I医師と会い、T医師から両目失明の危険性を聞き決断する事にしましたと説明すると、
「え、何ですかそれ?僕も頭頸部のガンに携わってきてそれなりの経験は積んでますが、そんな眼球の成分で抗体が出来て右目も失明なんて聞いた事ないですよ?
T医師は慶応大学医学部の先輩になるので余り言えないんですけど・・・、それはちょっと初耳です。
いや、僕の経験不足かもしれないですけどね。」
と、酷く困惑している。


こっちも本当に悩みに悩みぬいて決心したのに、
その判断材料が全くのデマだったと判明し、
父親も嫁さんも俺もポカーン。
(くっそ、またやられた!!あいつ、どこまで腐ってやがるんだ!!
自分で手術に関わりたくないからってデマまで言うか!?)


この一件で親も目を取れ取れと言わなくなり、
自分の納得がいくよう動きなさい、ただし手遅れにならないよう迅速にと、
それ以降あまり横槍を入れてこなくなる。




S総合病院にて その2
PET検査を受け、M医師と今後どのような治療方針を採っていくかの話し合いを持つ事になるが、その前にT医師はもう信用ならないので彼の診察・手術は受けたくないのですが・・・と相談すると、
「それは構わないよ。信用できないんだったら仕方ないでしょ。」
と淡々と話を進める。


PETとMRI画像を見る限り外科手術を行わないM医師でも、
また参考に聞いてみたJ大学病院のO医師の見解としても正常に機能している眼球を取るのは早計だと意見が一致した。
ただし、眼球を残す手術をどこで誰がやってくれるかが問題。


本当は知り合いの権威に依頼をかけたいところなんだけど、近場の2人はそれぞれ今春引退と地方の新進病院の組織作りの為現場から離れた為、紹介できない。
もし、最終的に手術を担当してくれる医師が見つからず眼球を取らざるを得なくなったとしても、K大学病院より治療実績件数の多い腕のたつ病院・医師を紹介できるようにするから少し時間をくれないかと1週間待つ事になる。




1週間後、M医師から「抗がん剤治療を受け持ってくれたY医師見つかったよ。もう海外から帰ってきていて、
移籍準備の為J大学病院にいたよ。
君の事話したら彼も眼球温存に賛同してくれたよ。
もしかしたら彼が移籍先の病院で手術受け持ってくれるかもしれないから2〜3日待って。」
と説明を受ける。



そして「Y医師は移籍先の病院でまだ医療チームが作れてないからそっちで手術は出来ないけど、僕が上に掛け合ってY医師をS総合病院に招聘し、T医師をアシスタントに付ける事で眼球温存した上で左上顎切除、ガン細胞摘出の手術が出来るようになったよ。」とM医師はミラクルを起こしてくれた。




今日、その手術の説明と事前検査を受けにS総合病院に行き、
Y医師はさすがに手術当日でなければ顔を合わすことがない為、
説明をにっくきT医師から受ける。
やはりガン細胞が触れていたであろう眼窩床を少し削るのは必要で、
通常それが元で眼球が下に落ち込んでしまい視界がおかしくなるので最終的に眼球を取らざるを得なくなる所、
今回眼窩床を削った後脚から皮膚を多めに持ってきて折り畳んだりしてハンモック状に眼球を支えるようにして眼球温存の手術を行ってくれるそうで、
これまで誰も提示しなかった術式でこれが権威の経験と力かと感心させられる。
T医師は相変わらず「Y医師は腕があるし、僕もアシスタントに付くから安心して。」
「君、開口障害だから喉の気道を切ってそこから麻酔の管通す必要があると思うんだけど、彼(Y医師)楽天家なのか鼻から麻酔の管通して出来ると言ってるんだよね。(笑)」と、
人を不快にさせる事を吐いていて、もう本当に関わりあいたくないのだが、
奴をアシスタントに付けなければS総合病院でY医師の熟練手術を受けられないのであれば、渋々でも受け入れよう。


さぁ、週明けには入院、翌日には手術が控えているので、
持ち込むゲーム機の選別や準備をせねば!!




結果はどうなるか分からんが、今回の特例対応に尽力して頂いたM医師とY医師には心から感謝。
そしてT医師は、全てが終わった後くたばってしまえ!!